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非上場株式評価上の3年内取得等不動産の時価課税制度(2)

◆前回のこのコラムにおいて、非上場株式を評価する際、1株あたりの純資産価額の算定上、課税時期前3年以内に取得等した土地等・建物等につき、相続税評価額に代えて、時価により計上する旨を定めた現在も存続しているルールにつき、その導入が30年前の平成2(1990)年8月であり、その直前の昭和63(1988)年に創設された被相続人が相続開始前3年以内に取得等した土地等・建物等につき、原則として取得価額により評価する旨の特例(既に廃止されている旧租税特別措置法第69条の4)との均衡を図ることを、その主たる目的として新設された経緯があったことに触れました。

◆これらの税制の導入・創設目的は、バブル絶頂期の地価の異常な高騰を背景として、目に余るような節税対策が横行していた当時の社会状況に対して、課税庁がいずれも課税時期前3年以内に取得等した不動産に限定して、個人による直接保有であろうと、法人を通した間接保有であろうと、その効果を即座に封じることにより、税収の減少に歯止めを掛けることにあったものと考えられます。ただし、これらの制度の内容を詳細に比較してみると、個人と法人、取得価額と時価といった課税対象や評価方法の差異だけではなく、実際にはその対象不動産の範囲につき、二つの税制には最初から大きな相違点が設けられていたことに着目する必要があります。

◆そもそも、個人に課せられた取得価額課税制度にはいくつかの適用除外規定があり、被相続人の居住用のもの、収用・交換等により各々の課税の特例を受けて取得したもの、相続・遺贈・贈与等により取得したものなどについては、そこに保護すべき事象、あるいは偶発的な事象を含んでいることから、この課税強化のための税制の適用対象外としていました。これに対して、非上場株式の評価における時価課税制度には、基本的にこうした例外がなく、例えば、役員社宅に供する目的により取得したもの、あるいは収用・交換等により取得したものであっても、課税時期前3年以内に取得等していれば、自動的にこの取扱いの適用対象とされることになっています。

◆その唯一の例外と言えるのが、つい最近導入されたばかりの、評価会社が所有する不動産が被災特定地域内にあり、特定非常災害の発生日前に取得・新築したものである場合に限り、この特例の対象外とするという取扱い(平成29(2017)年4月12日付個別通達課評2-10他「特定非常災害発生日以後に相続等により取得した財産の評価について」9)です。そこに保護すべき事象、あるいは偶発的な事象を含んでいる点においては、既に四半世紀前に廃止された個人の取得価額課税制度の適用除外対象不動産と同じであり、課税庁としても、被災資産に対してまで課税強化の取扱いを適用することは、さすがに馴染まないと判断したのであろうと思われます。