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最近の申告書様式等の改訂について(2)

◆続いて、同じく令和4年になされた税理士法及び同法関係通達等の改正に伴い、令和6年4月より施行されている税務代理権限証書および計算事項等記載書面、審査事項等記載書面の様式改訂について触れていきたいと思います。まず、令和4年4月31日になされた税理士法基本通達2-3の改正に伴い、税理士が委任を受けることができる税務代理の範囲に「税務官公署に対してする主張又は陳述の前提となる税務官公署から納税者に対して発する書類等の受領行為」を含むことが明確化されました。これらの様式改訂のうち、税務代理権限証書のフォーマットの見直しは、この改正を受けてなされたものであり、上記通達改正と同時に制定された税理士法関係様式通達(最終改正=令和6年3月13日)により、「税務代理の対象に関する事項」の後に「税務代理の対象となる書類の受領に関する事項」の欄が増設されたことに加えて、最下段に納税証明書の受領や過去の申告書の閲覧等、税務代理に該当しない行為につき、納税者より委任を受けるケースに用いることを想定した「委任状」の記載欄が新設されています。

◆ただ、上記の様式通達の記載要領を見ると、この「税務代理の対象となる書類の受領に関する事項」に関して、対象となる書類は5種類のみに限定されており、現状は、①更正の請求に係る更正通知・更正の請求に係る更正の理由がない旨の通知、②期限後申告書・修正申告書の提出、更正の請求に係る更正があった場合に課する加算税に係る賦課決定通知、③予定納税額の通知、④予定納税額の減額申請に係る承認又は却下の通知、⑤適格請求書発行事業者の登録通知が対象となっています。さらに、上記権限証書に対象書類の項目を明記した上で、これらの書類の受領に関する申請をe-Taxで行い、e-Taxによりこれを代理受領することが前提とされています。つまり、税理士による代理受領は電子でしか行い得ないということであり、前回紹介した〈行政手続IT化にあたっての3原則〉のうち、①のデジタルファーストの原則(個々の手続きが一貫してデジタルで完結)の考え方に貫かれた制度設計がなされていることになります。

◆一方、税務調査に関する事前通知に先立ち、税理士が課税庁の意見聴取を受けることにより、調査の実施自体が省略されるケースがあるなど、税理士が納税者の防波堤になる役割を果たす意味合いを持つ書面添付制度(税理士法第30条・33条の2・35条)の様式に関しても、今回、そのタイトルを内容と整合させることも含めて、若干の見直しがなされました。この制度には、申告書を作成した税理士自身がその計上内容の判断ポイント等につき詳述する「計算事項等記載書面」(同法33条の2第1項)、納税者や他の税理士が作成した申告書につき、その審査を依頼された場合に税理士がその内容を確認した上で所感を述べる「審査事項等記載書面」(同法33条の2第2項)の2種類があります。これまでの様式は、いずれも冒頭に年分や事業年度の記載があるなど、専ら所得税・法人税・消費税用に作られていましたが、今回、新たに資産税(相続税・贈与税)用の様式が定められました。また、双方の様式共に、「総合所見」の欄が加えられたことにより、関与した事案に対する税理士のスタンスや考察結果を集約して述べることが可能となっています。

◆さて、ここで財務省が発表しているこれらの税理士法第33条の2に規定された書面の添付割合のデータに目を転じてみましょう。最新の『令和4事務年度国税庁実績評価書』によれば、直近の令和4年度の税理士が関与した申告書の提出件数に占める書面添付があったものの割合は所得税=1.5%、法人税=10.0%、相続税=23.4%となっています。その10年前にあたる平成24年度は所得税=1.0%、法人税=7.8%、相続税=7.3%であったことを考えると、いずれの税目も着実にそのシェアを増加させていることは同様ながら、相続税の割合だけが突出して多くなっており、ここ10年間で3倍以上に増えていることが分かります。つまり、それが財務省や課税庁の本意であるか否かはさておき、この制度は事実上、専ら相続税の申告事案のために機能していると言えるような面があり、課税庁が今回、新たに資産税用の様式を定める旨の対応をしたのは、こうした実情を反映したものであると考えることができます。

(参考までに、下記に財務省の過去の『国税庁実績評価書』から集計した直近11年分のデータを表にしたものをご紹介します)

【税理士法関係様式通達(最終改正=令和6年3月13日)に定められた新様式に関する参考サイト】

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/zeirishi/2204xx/01.htm